“バーの街”と呼ばれる礎を作った、松本の『MAIN BAR COAT』。

新宿から特急あずさに揺られること約3時間。松本に降り立ち改札を抜けると、「お城口」と「アルプス口」という魅力的な二択が待っている。松本城と北アルプスという二大名所を擁する松本は、言わずと知れた人気の観光地。あずさの車窓からは、山梨では富士山、松本に近づくにつれて北アルプスの山々が見え、移り変わる景色だけでも旅情をかきたてられる。

松本城、北アルプスはもちろん、松本出身の草間彌生の常設展で知られる松本市美術館、蔵造りの建物が並ぶ中町通り、名物の山賊焼きやおやき……。やりたいことはいくらでも浮かぶが、今日はあえて欲張らず、静かに松本ならではの自然を感じる日にしようと決めた。目的地のバーには、かしこまって行くのではなく、街を散歩する延長で訪れたい。初夏でも心地よさがあり、バーにも馴染む品の良さを持つレギュラカラーのブロードシャツを選んだ。


まず向かったのは、あがたの森公園内にある『旧制松本高等学校』。1920年に開校し、1973年まで実際に学校として使われていた場所だ。閉校後は解体される予定だったが、残してほしい」という市民の声を受け、市が買い取り、『あがたの森文化会館』として保存された。



山をもっと近くに感じたくなって「アルプス公園」へ。約71ヘクタールの広大な敷地で、展望広場からは北アルプス連峰や安曇野を見渡せる。



北アルプスの雄大な山並みを堪能しているとバーが開く時間に。
今回の目的地は1998年創業の『MAIN BAR COAT』。 “バーの街”と呼ばれる松本のオーセンティックバー文化を牽引してきた一軒だ。蔵造りの建物の2階へ上がり扉を開けると、飴色の一枚板のカウンターにイギリス製のアンティークチェアが並ぶ。重厚な空気に背筋を伸ばすと松本出身の店主、林幸一さんが穏やかに迎えてくれた。ここには上高地や旧中山道を目的に旅する海外からの観光客が立ち寄ることも多いそうで、バーを旅の目的地にしている先輩たちが集う場所だった。




ロックのウイスキーを味わっているうちに旅の疲れも癒えていく。カウンター越しに話を聞いていると「あずさでビールを一杯飲んで、そのまま店に来てくださる方も多いんです。何度も通ううちに、松本に家を買った方もいますよ」と教えてくれた。北海道のホテルのバーで修行し、独立を機に地元に戻った林さん。縁がなかったはずなのに、定期的に松本へ通うようになった人たち。そして、この街に家まで買った人。さまざまな人を惹きつける松本という土地のことをもっと知りたくなる。また思い立った日に、あずさへ飛び乗りたい。

長野県松本市中央2-3-5 ミワビル2F
18:00〜24:00(LO 23:30)
日、月休(祝日の前日の場合は営業)
Official Website
http://mainbarcoat.com/
北海道『クラブメッド・サホロ』でバーテンダーとして経験を積んだ林さんがオープン。独立前後には数々の大会に出場し、2001年には「全国バーテンダー技能競技大会」で優勝した実力をもつ。林さんによると、松本のバーは店同士の結びつきが強く、お酒、サービス、街の歴史について学ぶ勉強会をバーテンダー同士で開くことも。そんな積み重ねが“バーの街”と呼ばれる文化を育ててきた。