
長きにわたってグラスの底を灯す荘厳なシャンデリア。

西洋文化が広まり始めた1922年に「世界に誇る施設ながら誰もが利用できる社交場」を目指し開場した東京會舘。創業当時から各国の国賓や公賓をもてなし、現在も結婚式や宴会場などとして利用され、格式高いサービスで知られている。
1971年と2019年に建て直し、時代に伴い変化したものも多いが、ロビーの柱、貴賓室、正面玄関など、随所で初代の意匠を継承している。『メインバー』のコースターにデザインされているシャンデリアもそのうちの一つ。初代本舘には3基あり、現在は1基のみとなったが、東京會舘のシンボルとして現在も輝き続けている。
シャンデリアが螺旋階段を歩く花嫁を美しく演出するのと同じように、コースターに描かれたシャンデリアもドリンクをより華やかに見せてくれる。グラスの中に夕暮れのマンハッタンの街をイメージしたカクテル「マンハッタン」は惚れ惚れする甘美な色をしていた。
創業から100年以上が経ち、長年通うお客さんが多い『メインバー』。スタッフの年齢層は幅広く、「長くいると常連さんたちも安心してくれますね。10年後、その先のことを考えると若手も大事です」と勤続30年目を迎えるチーフバーテンダーの間根山寛之さん。未来を見据え、常に信頼のおけるバーテンダーがいる環境を整えているところに品位ある伝統的なバーとしての責任が感じられる。
沈む夕日は何度、目に焼き付けても足りない。『メインバー』でマンハッタンを注文すれば綺麗な夕日を見ているときのような気分になると知って、また一つ世界が広がった気がした。

東京都千代田区丸の内3-2-1 1F
050-3134-3553
11:30~14:00、16:00~22:00
土・日・祝休
Official Website
https://www.kaikan.co.jp/restaurant/mainbar/
内装を手がけたのは〈乃村工藝社〉。100年時を刻む手巻きの大時計や回転式の椅子など、初代、二代目から受け継がれているものも多い。2015年まではバーが二つあったが、現在はメインバーのみ。