
和田誠、田中一光……、文化人が集った足跡がコースターに。

カクテルブックの出版や文化人らが夜な夜な集っていたという逸話から伝説的なバーとして憧れの存在だったけれど、実際に訪れてみるとバーに馴染みのない若者こそ訪れるべき場所だった。
日本のバー文化を牽引してきた創業者の尾崎浩司さんが作り上げた美意識を肌で感じられるのはもちろん、現在カウンターに立つバーテンダーの齋藤裕次さんは「初めての方は10年後20年後のお客さんになってくれる人たちだから」とメニューの背景を丁寧に説明してくれて、カクテルの味がグッと身近になる。
コースターも聞けば聞くほどストーリーが詰まったアイテムで、手掛けたのはイラストレーターの和田誠さんとグラフィックデザイナーの田中一光さん。1972年に創業してから今までに3店舗オープンしている『バー・ラジオ』だが、二人は1店舗目から通った常連で、2番目のお店の開店祝いとしてコースターを作ってくれた。尾崎さんからの要望に応え、和田さんが絵柄をデザインし、文字を田中さんが担当。星は夜空に無数にあることから豊かさを、麦はウイスキーをつくる二条大麦、リボンは友愛、葡萄はワインとコニャックの原料で豊穣を表している。アイコニックな猿は尾崎さんが申年だったからと、すべてのイラストに意味があった。コースターもカクテルも背景を知ってから触れるとまったく違うものに見えてきて、これがバーの醍醐味だと腑に落ちた。ただお酒を飲む以上の体験ができるから初めてバーに行く人にこそ訪れてほしい。

東京都港区南青山3-10-34
03-3402-2668
17:30〜23:30
日・祝休
Official Website
http://www.bar-radio.com/
表参道のメインストリートから脇道に入ると現れる一軒家を改装したバー。3番目に作られた『サード・ラジオ』で、建築家の石川純夫さんが自ら尾崎さんが望む条件の揃った物件を探し設計。内装には東北の民家の解体材を使用しており、カウンターや一部の机は『セカンド・ラジオ』から持ってきたもの。