Vol.3『女王陛下の007』

女王陛下の007
『女王陛下の007』イアン・フレミング、井上一夫訳、早川書房 https://www.hayakawa-online.co.jp/shop/g/g0000611315/
ジェイムズ・ボンドはウイスキーをひと口すすると、相手の顔を敵意をこめて見守った。この男が、世界最大のプロのひとりだったのか!
物語を動かす、ウイスキー。

 英国秘密情報部MI6のエージェント、ジェイムズ・ボンドの活躍を描くスパイ文学の金字塔、007シリーズ。ボンドが飲む酒といえば、「ウォッカマティーニを、ステアではなくシェイクで」というパンチラインと共に記憶されている向きが多いかもしれない。しかし、長編第10作目にあたる『女王陛下の007』で物語を動かすのは、ウイスキーだ。ボンドがカジノで窮地に陥ったテレサを救ったことから幕を開けるのだが、彼女が実は犯罪組織ユニオン・コルスの首領マルクの娘だったから、さぁ大変。心を病んだテレサを救いたいマルクは、ボンドを拉致して「娘と結婚してくれないか」と迫る。その際、マルクはボンドに言うのだ。「わしを殺すなよ、頼むよ。少なくとも、おたがいに強いウイスキー・ソーダを一杯ずつやって話をするまでは殺さんでくれよ」と。かくして、ウイスキーを飲み交わすことになったボンドが、マルクを見つめながら思い浮かべるのがこの台詞。ボンドはこの乾杯を通して、マルクがいかに娘のことを思っているかを知る。ウイスキーはときに、「世界最大のプロのひとり」の心を開き、いかにも人間的な愛情の吐露を促す引き金になるのかもしれない。

『女王陛下の007』
イアン・フレミング、井上一夫訳、早川書房

スペクターの首領ブロフェルドを探すボンドは、カジノで救ったテレサの親に教えてもらい、その居場所を突き止める。アルプスにある山荘「ピッツ・グロリア」に潜入しているという情報を得るが……。映画版では、ピーター・ハントが監督を務め、モデル出身のジョージ・レーゼンビーがボンドを、最終的に彼と結婚することになるテレサはダイアナ・リグが演じている。


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